あの人が「うつ病」を自覚できない最大の理由・・・。

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40代男性会社員の妻から、こんな相談を受けたことがある。

その男性会社員は職場の人間関係で悩み、不眠や食欲不振など家族から見て

「うつ病では?」と疑われるような症状がいくつか見受けられていた。

そこで心配した妻が本人に精神科や心療内科の診察を勧めてみたところ、

「俺を精神病棟に閉じ込める気か!?」と反発され、

それをまったく聞き入れないのだという。

このケースに限らず、自分がうつ病かもしれないのにそれを認めず、

みずからをいじめ続ける「うつ病予備軍」は多い。

家族や会社の同僚など周囲から心配されても、

頑として治療を始めない人だ。あなたの周りにもいないだろうか。
 
 
 

■ 数百万人がうつ病を自覚できていない

この12月から、改正労働安全衛生法に基づく

「ストレスチェック制度」が多くの企業や役所などで義務付けられた。

業種を問わず、常時使用する労働者が50人以上いる事業所は、

従業員に対してストレスの程度を計測するアンケートのような調査を、

毎年1回以上は実施しなければならない。

つまり身体の健康診断と同じように、心の健康診断が義務付けられた。

これをめぐっては、

「メンタル不調者をあぶり出そうとしているのではないか」という指摘もされている。

確かにそうした側面も否定はできない。

ただ、心の専門家の立場から見ると、

そのリスクよりもはるかに重要な問題に手をつけるための制度であることは間違いない。

それは何か。

メンタル不調を患っている人に対し、その「自覚」を促すことだ。

そもそもどんな病気でも特別なケースを除いて、自覚がないのに病院を受診する人はいない。

うつ病の治療においても同じだ。

「当たり前だ」と思うかもしれないが、

その当たり前が実現されないからこそ、うつ病の問題が解決しない。

最新の調査によると、通院しているうつ病患者数は約96万人(厚生労働省患者調査 2011)。

ところが、世界保健機関(WHO)の調査から推計すると、

日本のうつ病患者数は360万人から600万人いるとされる。

まったく数が合わない。

うつ病患者予備軍が、受診の必要性を自覚できず今も苦しんでいる。

筆者は心理カウンセラーという仕事のほかに、うつ病患者の家族を対象に、

患者に対する接し方のアドバイスを行っている。

言わば「接し方アドバイザー」でもある。

その相談の約3割が、

「家族がうつ病のような症状を訴えているが病院を受診してくれない」

という本人の自覚に関する悩みである。

冒頭の事例のように、精神疾患に対する一昔前のイメージから、

受診を恐れる人は少なくない。

「本人が望まないのならそれでいいじゃないか」という意見もあるかもしれない。

それでも不眠や食欲不振など症状を訴える患者をただ見守る生活というのは、

家族にとって酷なものである。

うつ病の治療には投薬と休養が必須だ。

本当にうつ病だった場合、治療せず放っておいて良くなることはありえない。
 
 
 

■ うつ病になる人=会社にとって都合の良い社員

とはいえ、「治療が必要かもしれない」と認める行為はそれほど簡単ではない。

これは「歯が痛くても歯医者に行きたくない」という心境と少し似ている。

歯が痛いという以上に「治療が恐ろしい」のだ。

「なぜもっと早く来なかったのか」と医師から咎められることが分かっているのにもかわらず、である。

治療の必要性をみずからなぜ自覚できないのか。

その理由は、うつ病になりやすい人の性格傾向と深く関係している。

その代表例を3つ挙げてみよう。
 
 

①「まぁ、いいや」と言えない完璧主義

仕事を完璧にこなさないと気が済まない。与えられた仕事は最後まで責任を持って「自身の心身がどうなろうと」まっとうする。

②決まりごとを絶対守ろうとする几帳面さ

ルールを守ったり、目標を達成したり、決まりごとを重視する傾向がある。柔軟な対応ができず、ストレスを溜めてしまうことが多い。
 

③無茶な要求に「NO!」と言えないお人好し

その場の空気を読む能力が高いという傾向がある。相手の期待が読み取れてしまうため、自身の気持ちより相手の要求を優先してしまう。
 

 

もちろん個人差はあるだろう。

しかし、うつ病になりやすい人は「会社にとって都合の良い社員」であることは多い。

過去にうつ病を患った私の妻も、この条件に見事当てはまっていた。

大手通信企業の管理者であった妻は、過重労働や無理難題に対して「NO!」と言えない性格であった。

責任感が強く几帳面、しかもNOと言わない。

会社からすると使いやすい人材だったに違いない。
 
 

■ 簡単に休めるような人はうつ病にならない

うつ病になりやすい人は、心身の不調があっても簡単に仕事を休んだりはしない。

多くの精神科医はこう言うだろう。

「仕事を減らしてもっと休みなさい」と。

ただ、それが簡単にできる人はそもそもうつ病にならない。

いくらつらくても仕事を優先してしまう人だからこそ、うつ病になるのだ。

「うつ病予備軍」の家族から受けた相談をまとめると、

「治療が必要かもしれない」という自覚を彼らが拒否する理由のほとんどが以下3つに分けられる。
 
 

①仕事が忙しくてそれどころではない

「この仕事が落ち着いたら…」といつまでも言い続ける人は多い。しかしうつ病は、往々にして「休めない時期」に限って発症する病気である。
 

②人事考課や昇進に影響するのが恐ろしい

「会社にあるメンタルヘルス相談室」には行きたくないと訴える人も少なくない。「アイツは戦線離脱した」と思われるのが恐ろしいのだ。

③自分はうつ病になるほど弱い人間ではない

「警察官の夫がうつ病を治療してくれない」と相談を受けたことがある。「うつ病は弱い人間の病気だ。おれはうつ病じゃない」と抵抗していたという。
 

 

以上、3つの理由には共通点がある。

「他者の評価を気にしている」という点だ。

うつ病になりやすい人は周囲の声に対して敏感に反応する。

「職場の人に迷惑がかかるから」という理由も、

「仕事ができないと思われたくない」という他者の評価を気にする心理の裏返しである。
 
 

確かに、ある程度、他者からの評価は必要である。

給料をもらって生活をするには、会社から見捨てられるわけにはいかないだろう。

ただ「治療の必要性」を認めない限り、遅かれ早かれ、その時はやってくる。

職場のストレスを我慢し続けた30代の男性会社員は、

「突然、体がいっさい動かなくなった」と言う。

心身の叫びを無視し続けたツケは大きい。
 
 

■ うつ病を自覚するかどうか? は本人次第

ストレスチェック制度は、会社側に課せられた義務である。

厳密に言うと、労働者側にチェックを受ける義務はない。

労働者はチェックや医師の面談を拒むこともできる。

結局、ストレスチェック制度は単なる仕組みであり、

その仕組みによって自分を守るかどうか、最終的な判断は本人に委ねられる。

自身のうつ病に気付く一つの指標が「残業時間」である。

長時間労働でうつ病発症のリスクが2倍になるという研究結果も出ている(米科学雑誌プロスワン 2012)。

こういった客観的で明確な基準があるのだ。

思い当たる節があるなら、ストレスチェックを受験し、その結果を真剣に受け止めてみてはどうだろう。

実は、私の姉はうつ病を苦に自殺している。

やはり真面目で責任感が強く、仕事もできるほうだったが、徹底的に「頑固」でもあった。

最後に話をしたとき、「自分さえ我慢すれば何とかなる」と呟いたのを覚えている。

周囲に迷惑を掛ける自分を最期まで許せなかったのだろう。

しかし、残された家族としては「迷惑を掛けてでも生きていて欲しかった」、そう思わざるを得ない。

「自殺」は深刻な問題である。

減少傾向にあるとはいえ、いまだ毎年2万5000人以上が自殺している。

特定できた動機のうち、「うつ病」は常にトップだ(警察庁自殺統計 2014)。

彼らは決して死にたかったわけではない。

命を投じても解放されたいと願うほど苦しかったのだ。

会社の評価は大事だ。

周囲に迷惑を掛けないに越したことはない。

ただ、いずれも「生きていればこそ」の話である。

「治療が必要かもしれない」という自覚は、生きるための第一ステップなのだ。

本記事のタイトルを一見して、あなたは誰を想像したのだろう。

ひょっとしたらあなた本人かもしれないし、誰か思い当たる「あの人」がいるかもしれない。

もし、「あの人」が、「治療が必要かもしれない」という自覚をためらっているのなら、

あなたが背中を押してみてはどうだろう。

人生は長い。

潔く足を止めて治療に踏み切ることが、

残りの人生を楽しく生きる最短の道であることを伝えてあげてほしい。

片田 智也

出典元:東洋経済

わたしも精神的に病んでいたときがありました。

周りの人が助けてくれ、今では元気に働いています。

「ビジネス本」ばかり読んでいたわたしに「小説」を薦めてくれました。

プライベートの時間で少しでも仕事のことを頭からはずす。

仕事のことを想像しないようにするそんな配慮です。

そのときに読んだ本が「下町ロケット」。

今ではドラマをあのときの苦しさを思い出しながら楽しく観ています。

人生において少しの立ち止まりはその後、

振り帰ったときに貴重な時間になるかもしれません。

命あっての人生です。

考えさせられました。

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