大村智さんの抗寄生虫薬に「ノーベル医学生理学賞受賞」~熱帯救った日本の菌~ 

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出典元:東京新聞

2015年のノーベル医学生理学賞を受賞した

北里大学の大村智特別栄誉教授が

10月5日夜、都内で記者会見した。

大村氏の偉業はもちろんのこと、

「微生物の力を借りているだけ」

「人のために」といった言葉の数々が多くの人々の心に響き、

インターネット上で称賛の声が相次ぎ寄せられている。
 
 

それでは、大村教授の研究に~THINK TIME~です。
 
 
 

アフリカや中南米で広がる「顧みられない熱帯病」の制圧に、

日本人化学者の発見が貢献していることを知っているだろうか。

その人、大村智さんのチームが伊豆半島で見つけた

放線菌(細菌の仲間)が特効薬の元だ。

ときは40年ほど前にさかのぼる。
 
 
 
「この菌はおもしろそうだ」
 
 

試験管に入った菌の培養液が並ぶ。

その一つに大村智さんの目がとまった。

直感だった。

菌はつくり出す化学物質によって培養液の色が違う。

この菌は、これまでにない色や性質を示していた。

 1974年、静岡県伊東市の川奈ゴルフ場近くの土から

見つけたカビに似た新しい放線菌だ。

大村さんはこのとき、北里研究所抗生物質室長。

研究員とともに小さなポリ袋とスプーンを持ち歩き、

通勤や出張時、各地の土を集めていた。

1グラムの土には1億もの微生物がいる。

中には薬をつくり出す菌もいるだろう。

だが入っている保証はどこにもない。

「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦の世界」。

それでも、年間3千もの菌をひたすら調べ続けた。

 米国留学から戻り、米製薬大手メルクと3年契約で

共同研究を始めて1年が過ぎたが、まだ成果は出ていなかった。

有望な菌の一つとして、メルクに送った。

しばらくして返事が来た。

忘れもしない。

「菌がつくる物質は寄生虫を退治する効果が高い」。

マウスに飲ませると、感染していた寄生虫が激減したというのだ。

 当時、家畜の薬は人の薬を転用することが多く、

効果はあまり期待できなかった。

家畜の栄養を奪う寄生虫を退治できれば、

食肉や羊毛の増産につながる。

化学物質の分子構造を決定し、

「エバーメクチン」と名付けた。

とくに牛や馬、羊などの腸管に寄生する線虫類に効いた。

線虫の神経に働き、まひを起こして死滅させることがわかった。

 79年に共同で論文を発表。

分子構造の一部を変えて効果を高めた「イベルメクチン」を開発し、

メルクは81年、家畜用の抗寄生虫薬として発売した。

2年後には動物薬の売り上げトップに躍り出た。
 
 
 
 ■米製薬会社と共同研究

大村さんは山梨大を卒業後、東京都立高校の定時制の教師に。

生徒の学ぶ姿に胸を打たれ、東京理科大大学院で

化学を学び直し、研究者をめざした。

36歳で米国に留学。

帰国前、「戻っても研究費はない」と言われた。

それなら「米国で集めるしかない」と、

製薬会社をまわって共同研究を打診した。

問題は研究テーマをどうするか――。

北里研究所の創設者・北里柴三郎や

志賀潔らが培ってきた微生物研究で、

人の病気の治療に貢献したい。

だが、青カビから抗生物質「ペニシリン」が

1920年代に見つかって以来、

人の治療薬研究は激しい競争にさらされていた。

「同じことをしても勝ち目はない」。

そこで目を向けたのが動物薬だった。

共同研究にメルクが応じ、提示してきた研究費は、

日本なら教授一人の10倍に相当する年2500万円。

留学先の教授が、大村さんの仕事ぶりや人柄から

「いい仕事をする」と売り込んでくれていた。

企業との共同研究を「癒着」と冷ややかに見る研究者もいた。

だが、
 
 

「いい薬をつくろうと思ったら製薬会社の情報量は重要。

世の中のためということを忘れなければ、問題はない。」

そうして生まれたのがイベルメクチン。

犬のフィラリアの治療などに広く使われている。
 
 
 
 
 
出典元:毎日新聞  
 
 ■アフリカ・中南米で効果

もともと「動物に効けば人にも効く薬につながる」

という道筋を描いていたが、吉報は、意外に早くやってきた。

動物用に発売してから1年。

イベルメクチンが、アフリカや中南米で広がる人間の熱帯病

「河川盲目症」にも効くことがわかった。

ブユにかまれ、体内にフィラリア線虫の幼虫が入り込む病気。

激しいかゆみを起こし、失明につながる。

感染者は推定2千万人。

メルクは人間用の抗寄生虫薬「メクチザン」を開発、

87年に無償提供を始めた。

世界保健機関(WHO)は95年、

これを使う新たな制圧プログラムをアフリカで始めた。

毎年4万人の失明を防いでいるという。

大村さんは2004年、ガーナを訪ねた。

失明し、子どもが持つ杖に引かれた高齢者の姿があった。

「薬ができて、子どもたちに

自分の病気をうつさなくて済むことが、うれしい」と話してくれた。

大村研究室が見つけた化学物質は471、

うち26が薬になった。

現在、北里大特別栄誉教授の大村さんはいう。
 
 
 

「人との出会いを含めて、運が良かった。

『チャンスは準備が整ったところにくる』という言葉を信じている」
 
(朝日新聞 2013年6月24日掲載)
 
 
 
教育方針でも「大村色」を発揮した。

あるとき優秀な学術論文をコピーで配り、こう伝えた。

「ここに書いてあることは、マネするな」。

他の人の先行事例を模倣する考え方もあろうが、

「人まねはだめ」が大村の信念だ。

「金がなければ、知恵を出せ。知恵もなければ、汗流せ」

と若い研究者にゲキを飛ばすという。 

みなさまはどう感じましたか?

考えさせられる記事ですね。

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